資格教育センターでは2月16日に千葉県立美術館で、シンポジウム「彫刻をさわる時間―触覚にとって美とは何か―」(共催:筑波大学芸術系彫塑研究室、協力:千葉県立美術館、松前記念館)を開催しました。千葉県立美術館で3月2日まで開催されている「彫刻に触れるとき 『さわる』と『みる』がであう彫刻展2025」の関連イベントとして、本学資格教育センターの「地域連携によるユニバーサル?ミュージアム普及事業」の一環で開いたもの。彫刻芸術における触覚性や「触れる鑑賞」の可能性を考えることなどを目的に3部構成で行い、オンラインと合わせて約90名が参加しました。



第1部「展示会場での『触れる鑑賞』」は筑波大学准教授の宮坂慎司氏の進行で、全盲の広瀬浩二郎氏(国立民族学博物館教授)、半田こづえ氏(明治学院大学非常勤講師)が触覚で感じた素材感や触れる鑑賞のポイントを解説。参加者も実際の展示に触れ、「自分の目が見えていた時は、何も見ていなかったのだと悔しさすら感じました。これからも目いっぱい触って感動を味わいたい」と話していました。鑑賞の様子はオンラインでも配信しました。



第2部は、映画『手でふれてみる世界』と題する、視覚に障害のある夫妻が創設したイタリア?オメロ触覚美術館を舞台にしたドキュメンタリー映画を上映しました。岡野晃子監督は「今回の上映は、視覚や聴覚に障害のある人と共に鑑賞することのできるユニバーサル版で、字幕と音声ガイドがついていますので、目で見て、時には目を閉じて作品を感じてください」とあいさつ。上映後は、コロナ禍での制作の苦労や作品に込めた思いを語り、音声ガイドを手がけた遠藤郁美氏も交えて作品を言葉で表現する難しさなどを説明しました。



第3部「公開討論『触れてみる美』」では、本センターの篠原聰准教授が司会を担当し、宮坂氏、広瀬氏、半田氏に加え、展覧会出品作家や本学松前記念館の田中実紀さん(大学院文学研究科2年次生)も登壇。作家たちが自身の作品を解説するとともに制作のゴールや触れる展示についての考えを語りました。本センターが神奈川県立平塚盲学校の児童?生徒を対象に行っている造形ワークショップでも講師を務める作家の高見直宏さんは、「出品前日まで彫り続けていて、常に形が変わっていくものを作ろうとしているのかもしれません」とコメント。宮坂氏は、「摩耗したり壊れたりすることがあれば作家が直し、触って形が変わっていくことも受け入れながら展示していけばいいのではないでしょうか。触れる展示は障害がある人のためだけに開いているのではありません。視覚で全てを認識した気になるのではなく、時間をかけて触り、作家の思いを感じてほしい」と話しました。篠原准教授は、「目で見るのとは全く違う、作品の奥にある作り手の思いや温かみ、触れて見る世界の豊かさを改めて認識しました。今後も触れる展示の可能性を考えていきたい」とまとめました。