湘南キャンパスで11月30日、先進生命科学研究所主催のセミナー「香料概論~フレグランスの世界~」を開催しました。本研究所では、本学の生命科学?工学に関する研究活動を横断的に集約し、生命科学や生命工学研究の最も重要な目的である人類の「命(いのち)の質」(QOL)の向上に貢献できる研究をしています。このうち香粧品研究部門では、さまざまな植物から抽出される香料の有効成分や効果的な配合、それらの植物の栽培方法などを生命科学と生命工学の知見を結集して解明。生き生きとした人生をサポートする商品開発を目指して活動しています。今回のセミナーはこの活動を踏まえ、高砂香料工業株式会社で香りの評価を専門に行う「エバリュエーター」の駒澤亜季氏を講師に招きました。
当日は、17号館研修室を会場に、理学部や工学部の学生、教職員ら約30名が聴講。駒澤氏はまず、顧客のコンセプトに合わせた香料の調合や、そのためのマーケティング活動など、香料会社の仕事内容について紹介。「匂いの正体は揮発性の有機化合物であり、私たちは日常生活の中でにおい分子の複合臭を感じています。例えば、”苺の匂い”と認識している香りは、苺を形成するいくつかの分子の匂いが合わさった複合臭なのです」と、香りのメカニズムについて解説しました。また、1tのバラから約1kgしか香料を採取できない「ローズオイル」や、香水に用いられている「アルデヒド」など、8種類の香料を厚紙に染み込ませたサンプルを参加者に配布し、それぞれの原料や製法について説明しました。
今回出席した参加者には工学部生命化学科の学生が多く、中には食品や香粧品の香料を調合する「調香師」の志望者もおり、学生からは「香料の会社で働いている人が、日常生活で気をつけていることはありますか?」「ユーザーの世代ごとに香りの好みは変ってくるのでしょうか?」といった質疑応答が寄せられました。本研究所の平山令明所長は、「香りや化粧品の分野はどんどん市場が広がっており、QOLの向上に欠かせないものになっています。皆さんが今日の講義で香りの世界に興味を持ち、今後の研究に役立てていくことを期待しています」と話しました。