ティーチングクオリフィケーションセンターでは6月9日から9月29日にかけて、神奈川県立平塚盲学校の生徒を対象にアートワークショップを実施しました。神奈川県と本学が展開する「ともいきアートサポート事業(創作×地域展示)」の取り組みとして行ったもので、本センターの篠原聰准教授と「博物館実習2(松前記念館実習)」を受講している学生が参加しました。
初回となった6月9日は、同校にデザイナーの桑田知明氏を講師に招き、「ジャングル」をテーマに視覚に頼らない触る絵本を作る造形ワークショップを実施。児童?生徒たちは台紙にそれぞれが思い描くジャングルの様子を飛び出す仕掛けを用いて表現し、最後に合体させ一つの作品をつくりました。6月23日と7月7日の2回にわたっては、筑波大学芸術系助教の宮坂慎司氏の指導のもと粘土や石膏、ワックス(蝋)を用いたアートメダルを制作。「メダルと聞くと多くの人が平らで丸い形を思い浮かべると思いますが、手のひらに乗るサイズのアート作品を指します」と説明し、児童生徒たちは黙々と制作に取り組みました。また、7月7日には、全盲の美術鑑賞研究者である半田こずえ氏を招いて、美術作品の制作に対する思いや自身と美術の関係性などについての講義も行いました。
最終日となった9月29日は、平塚市美術館を訪問。初めに、篠原准教授と国立民族学博物館准教授の広瀬浩二郎氏が概要を説明した後、武蔵野美術大学教授の黒川弘毅氏が彫刻メンテナンスの意義や魅力を紹介しました。その後は、同館内に展示されている淀井敏夫の『海辺の女』、舟越保武の『萩原朔太郎』 『E嬢』、佐藤忠良の『ミーマア』 の4つの彫刻作品を鑑賞。篠原教授や学生らのサポートのもと、児童?生徒たちは刷毛やブラシを用いながた作品を触って起伏や質感などを感じとりました。さらに、同館の中庭に移動し、柳原義達の彫刻作品『座る女』を洗浄し、黒川氏による指導のもと中性洗剤やブラシを使って汚れを落としました。黒川氏は、「ブラシを通して彫刻のディティールを感じてみてください。直性手で触るのとは違った体験ができると思います」と話しました。協力して彫刻作品を磨き上げた児童生徒たちは「最初に触った時と感触が違う」「作るのは今まで何回かやってきたけど、洗うのは初めてだったのでいろいろなことが新鮮で面白かった」といった声が聞かれました。
同校小学部長の沖津有吾氏は、「一昨年から同事業でワークショップを実施していただき、今年で3回目になります。プロのアーティストの方による指導を受けながら、自分たちでブロンズ作品を制作するとともに、実施に展示されている芸術家が作ったブロンズに像に触れるという複数のワークショップを通して、児童?生徒たちは美術の新たな見方や考え方を深められたのではないかと思います。学生の皆さんは、児童?生徒たちを親身になってサポートをしてくれていたので、今年も楽しみながら取り組むことができたと思います。こうした交流の機会は、児童?生徒たちにとって重要な経験になるので来年度以降も実施できたらうれしい」と話していました。